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4.232025
恐怖!タイの女性から学んだ事
タイの女性は、笑顔が素敵で、しなやかで、とても女性らしい。
「世界中で女性が強くなった」と言われるけれど、
タイの女性を見ていると、“女性はいつまでも、女性である”――
そんな穏やかな印象を、私は持っていた。
……この夜までは。
タイをご存知ない方のために一言。
タイは、レディボーイ――いわゆる“オカマちゃん”の宝庫である。
その存在は自然で、街に溶け込んでいる。日本とはまるで文化が違う。
今回の出張も、仕事にひと段落がつき、手応えも感じていた。
「戦士にも休息は必要だろ」と、現地に住む仕事パートナーが
“ちょっと変わった店”に連れて行ってくれた。
女性が隣に座るような店は、家庭的にも、年齢的にも、私は少し気が引けた。
そう相談すると、彼は笑って言った。
「だったら絶対バレないレベルのレディボーイの店があるよ」
――そうして案内されたのが、その店だった。
⸻
バーの中には、美しすぎる“彼女たち”が並んでいた。
中でもひときわ目立っていたのが、スラリと長身の彼女(彼?)。
線は細く、モデルのような佇まいで、声をかけるのも躊躇うほどのオーラがあった。
そして事件は、彼女にしつこく絡み始めた男性から始まった。
――おそらく、元男性、つまりレディーボーイだとは知らずに。
最初は笑ってかわしていた彼女が、次第に表情を変えていく。
「Stop it!」
「Don’t touch me!」
「You crazy! Go away!」
それでも男はしつこく彼女を見下す態度を止めない。
すると彼女は彼の手を掴みそのまま店の外へ彼を引きずり出した。あっけに取られた彼は叫び彼女の胸ぐらを掴み忠告する。
「I’m a man! You’re a woman! You better stop this!」「女は男に刃向かうな」的な意味であろうか。
――男のその言葉が、最後の引き金になった。
⸻
胸ぐらを掴まれた彼女の正当防衛モード、発動。
目の前にいた自称ナイスガイな我々としては止めに入り、か弱い彼女を守ってあげなくては――そう思った、その矢先だった。
彼女から美しく鋭い前蹴りが一閃。
男は吹き飛び、腹を押さえてうずくまる。
立ち上がろうとしたところを、彼女はガシッとホールドし、
顔面とボディへ、迷いのない膝蹴りコンボ。
ここから始まったのは、“喧嘩”ではなかった。
およそ1分――それは、彼女による執拗な攻撃の時間だった。
周りにいた誰もが彼女はムエタイをやっていると一目瞭然だった。
だが彼女は、引き離されながらも、攻撃の手を一切止めなかった。
その技のキレと正確さに、誰もが息を呑んだ。
そして、ようやく現れたのは、
この手の繁華街で治安維持を担う、街の私設ガードマンたち。
ごつく、いかつく、明らかに腕っぷしの強そうな男たちだった。
彼女はようやく引き離され、ガードマンたちも静かにその場を後にし鎮静したかの様に思えた。
⸻
だが男は――よせばいいのに。
引き離された後、何かを口にした。
その言葉は聞き取れなかったが、彼女の目が再び光った。
そして、私の脳内にはあの声が響いた。
「Round 2… FIGHT!!!」
再び始まった彼女の攻撃。
そして私は見た。
リアル“ピヨピヨグロッキー”。
頭の上に星が回るような、あのストⅡのダメージ演出そのもの。
実在するとは思わなかったが、そこには確かに存在していた。
ストリートファイターIIを知っている方ならわかるかもしれない。
彼女はまさに“ムエタイの使い手サガット”。
「タイガーアッパーカットが出るんじゃないか」と、本気で思った。
あの破壊力、あのリズム。まさにゲームそのものだった。
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当然ながら、喧嘩で男性が女性に手をあげるのは、絶対に許されることではない。
なぜいけないか。それはもちろん、男性が腕力で勝るからだ。
ただ、タイは少し事情が違う。
男性が女性に手をあげることがNGであるのは変わらないが、
その理由は、「女性が弱いから」ではなく――
「下手をすれば、逆にあなたがボコボコにされる可能性があるから」である。
皆さんも、もしタイに来る機会があれば、
当然ながら怒って手をあげるようなことは、絶対にしない方がいい。
冗談抜きで、命の危険すらある。
この夜、私は身をもってそれを学んだ。
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“微笑みの国”、タイランド。
その微笑みの裏側には、決して触れてはならない激凛のスイッチがある。
もしかしたら、タイの人々は、あの優しい笑顔の奥で、
静かに怒りを蓄えているのかもしれない。
そんなことを思いながら、
私はその夜のウイスキーをもう一杯、ゆっくりと傾けた。
冒頭とは一転するが、女性(?)が強い国は、私の中ではタイが暫定ダントツ一位だ。改めてアメージングタイランドの土産話を片手に明日市場に帰ります。
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それでは皆さん、明日市場でお会いしましょう!