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恐怖!タイの女性から学んだ事

タイの女性は、笑顔が素敵で、しなやかで、とても女性らしい。
「世界中で女性が強くなった」と言われるけれど、
タイの女性を見ていると、“女性はいつまでも、女性である”――
そんな穏やかな印象を、私は持っていた。

……この夜までは。

タイをご存知ない方のために一言。
タイは、レディボーイ――いわゆる“オカマちゃん”の宝庫である。
その存在は自然で、街に溶け込んでいる。日本とはまるで文化が違う。

今回の出張も、仕事にひと段落がつき、手応えも感じていた。
「戦士にも休息は必要だろ」と、現地に住む仕事パートナーが
“ちょっと変わった店”に連れて行ってくれた。

女性が隣に座るような店は、家庭的にも、年齢的にも、私は少し気が引けた。
そう相談すると、彼は笑って言った。

「だったら絶対バレないレベルのレディボーイの店があるよ」

――そうして案内されたのが、その店だった。

バーの中には、美しすぎる“彼女たち”が並んでいた。
中でもひときわ目立っていたのが、スラリと長身の彼女(彼?)。
線は細く、モデルのような佇まいで、声をかけるのも躊躇うほどのオーラがあった。

そして事件は、彼女にしつこく絡み始めた男性から始まった。
――おそらく、元男性、つまりレディーボーイだとは知らずに。

最初は笑ってかわしていた彼女が、次第に表情を変えていく。

「Stop it!」
「Don’t touch me!」
「You crazy! Go away!」

それでも男はしつこく彼女を見下す態度を止めない。

すると彼女は彼の手を掴みそのまま店の外へ彼を引きずり出した。あっけに取られた彼は叫び彼女の胸ぐらを掴み忠告する。

「I’m a man! You’re a woman! You better stop this!」「女は男に刃向かうな」的な意味であろうか。
――男のその言葉が、最後の引き金になった。

胸ぐらを掴まれた彼女の正当防衛モード、発動。

目の前にいた自称ナイスガイな我々としては止めに入り、か弱い彼女を守ってあげなくては――そう思った、その矢先だった。
彼女から美しく鋭い前蹴りが一閃。
男は吹き飛び、腹を押さえてうずくまる。

立ち上がろうとしたところを、彼女はガシッとホールドし、
顔面とボディへ、迷いのない膝蹴りコンボ。

ここから始まったのは、“喧嘩”ではなかった。

およそ1分――それは、彼女による執拗な攻撃の時間だった。
周りにいた誰もが彼女はムエタイをやっていると一目瞭然だった。
だが彼女は、引き離されながらも、攻撃の手を一切止めなかった。

その技のキレと正確さに、誰もが息を呑んだ。

そして、ようやく現れたのは、
この手の繁華街で治安維持を担う、街の私設ガードマンたち。
ごつく、いかつく、明らかに腕っぷしの強そうな男たちだった。

彼女はようやく引き離され、ガードマンたちも静かにその場を後にし鎮静したかの様に思えた。

だが男は――よせばいいのに。

引き離された後、何かを口にした。
その言葉は聞き取れなかったが、彼女の目が再び光った。

そして、私の脳内にはあの声が響いた。

「Round 2… FIGHT!!!」

再び始まった彼女の攻撃。
そして私は見た。

リアル“ピヨピヨグロッキー”。

頭の上に星が回るような、あのストⅡのダメージ演出そのもの。
実在するとは思わなかったが、そこには確かに存在していた。

ストリートファイターIIを知っている方ならわかるかもしれない。
彼女はまさに“ムエタイの使い手サガット”。
「タイガーアッパーカットが出るんじゃないか」と、本気で思った。
あの破壊力、あのリズム。まさにゲームそのものだった。

当然ながら、喧嘩で男性が女性に手をあげるのは、絶対に許されることではない。
なぜいけないか。それはもちろん、男性が腕力で勝るからだ。

ただ、タイは少し事情が違う。

男性が女性に手をあげることがNGであるのは変わらないが、
その理由は、「女性が弱いから」ではなく――
「下手をすれば、逆にあなたがボコボコにされる可能性があるから」である。

皆さんも、もしタイに来る機会があれば、
当然ながら怒って手をあげるようなことは、絶対にしない方がいい。
冗談抜きで、命の危険すらある。
この夜、私は身をもってそれを学んだ。

“微笑みの国”、タイランド。
その微笑みの裏側には、決して触れてはならない激凛のスイッチがある。
もしかしたら、タイの人々は、あの優しい笑顔の奥で、
静かに怒りを蓄えているのかもしれない。

そんなことを思いながら、
私はその夜のウイスキーをもう一杯、ゆっくりと傾けた。

冒頭とは一転するが、女性(?)が強い国は、私の中ではタイが暫定ダントツ一位だ。改めてアメージングタイランドの土産話を片手に明日市場に帰ります。

それでは皆さん、明日市場でお会いしましょう!

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