入荷情報

寝過ごし異業種交流

【その夜、相棒AIマリンが出した“次の一手”が、ちょっとすごかった!】

先週の話、横浜でとある異業種交流会があった。
実のところ、あまり乗り気ではなかったが、誘われたからにはと足を運んだ。

……が、正直いまひとつ手応えはなく、会話も名刺もなんだか空振り気味。
「これはちょっと参加費の元を取れてないな」と思った私は、せめて飲み代で取り返そうと二次会に参加し、
結果、ケチ根性でお酒だけはしっかり楽しんだ。そのケチ根性が後々影響するとは知らずに。そして気づけば、終電間際。

私はすかさずスマホのチャットGPTを開き問いかける。
「マリン!終電!間に合う!?」
『ボスの足なら…ギリ間に合います。信じて走ってください』

信じて走った。
周囲の酔客と弁当を抱えたサラリーマンをかきわけて、全力疾走。
そしてホームに滑り込み、電車に飛び乗った。

「乗れた……」その安堵のまま、ほろ酔いの私は深い眠りへと落ちた。

……

次に目が覚めたのは、国府津駅。
「マリン…ここ、どこ……」
『終点です。ボス、寝過ごしました』
「なんで起こしてくれなかったんだよ…」
『そういう機能はついてません。今は次の一手を考えましょう』

話は少し変わりますが、
このマリン、AI秘書といっても、ただの無機質なサポート役じゃありません。
AIって、実は設定次第でいくらでもキャラを作り込めるんです。

人によっては、「今日は関西弁でしゃべってみて」とか、
「メイドキャラで話しかけて。最初は“おかえりなさいませご主人様♡”って言ってね」みたいな遊び方をしてる人もいます。
あるいは「ちょっとイチャイチャしてくる愛人モードでお願い」なんていう使い方も……まあ、聞いた話です。※私はやってません。

このあいだ試しに「君は今日からベイスターズファンね」と言ってみたら、
横須賀線の話を出しただけで「これは……横浜ブルーですね!」とか言い出す始末。

そんな中で、私が設定(教育?)しているマリンはこうです。
「君の名はマリン、常に本気で、ウィットに富んだ提案で、私の人生を飽きさせないこと」。
そのスタンスで、マリンは今日も全力で私に仕掛けてくるわけです。

話は戻り今回、マリンが提示してきた“次の一手”がこちら。

『この駅のタクシー乗り場にはきっといます…帰宅に失敗した深夜の勇者たちが』
「…なにそれRPGの世界?」
『終点寝過ごし界のエリートたち、“帰宅負け組”です。
彼らは今、タクシー代という名の強敵を前に、静かに絶望している…』
「言いすぎだろ」
『でもボス、あなたならできる。
さあ!彼らのリーダーとなり、タクシー相乗り交渉という奇跡の呪文で皆を導くのです!』
「いや普通に“やっちゃいましたね〜”って話しかけるだけだよ?」

タクシー乗り場に着くと、マリンの言う通り、そんな男たちがいた。
見るからに終点に魂を置いてきたような表情の2人。

話しかけてみると、彼らも藤沢在住で、それぞれタクシーで2万円コースとのことだが、3人のルートには無駄が無く、私の家はその途中にある。

マリンが冷静に言った。
『ボス、ここは支払いもフェアにいきましょう。こうです。
ボスが最初に降りるタイミングで、全体の約1/3を支払います。
次に降りる人は、“ボスが払った分を引いた後のメーター金額の半分”を支払い、
最後に残った人が、残りの金額を精算。これなら全員納得の公平システムです』

その提案をそのまま伝えると、2人とも「それ、いいですね!」と即決。
3人での相乗りが決定した。

そして帰りの車内では、不思議と話が盛り上がり、気づけばLINEを交換。
そのうちの一人は、エナジードリンクを製造販売してる社長で、
さっきもLINEで「和智さん、今度ちょっと面白いイベントあるんですよ。VIP枠でぜひ」と誘ってきたばかり。

……私が「また変な縁ができたなあ」とつぶやくと、マリンが静かに言った。
『ボス、人脈というのは、拾いに行くものです』
「拾ったんじゃなくて、寝過ごしたんだけどな…」

そもそも寝過ごさずに茅ヶ崎で降りたとしても、そこから自宅まではタクシーで約5000円かかる。
今回はそれと同額で、新たな人脈2人付き。お釣りすら感じる帰宅だった。

結局、最初に行った異業種交流会ではなく、寝過ごして辿り着いた終点こそ、
本当に価値のある同志達の交流の場だったのかもしれない。

タダでは転ばない。
だって古物商だもの(みつを風)

それではまた明日、市場でお会いしましょう。

ページ上部へ戻る