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めちゃ嬉しかった話と、めちゃめちゃ悲しかった話

今週は、コラムのネタになるような“めちゃ嬉しかった話”と“めちゃめちゃ悲しかった話”が両方ありまして、正直これ、2週分書けるくらいの濃さなんです。
でも一気にお届けしますので、最後までお付き合いください。

まずは、めちゃ嬉しかった話から。

ついに――あいつらが来たんです。
もう2年も待ちました。春になるたび空を見上げ、風が吹くたび胸が騒ぐ。
私の家に、日本ミツバチがやって来たんです。

きっかけは2年前の夏。
家の外に置いてあった木枠の収納ボックスに、何やら蜂の気配が。
「これはヤバいのが巣を作ってるんじゃないか」と慌てて相談したのが、当会の会員であり私とプライぺートの親交も深い、蜂に詳しそうな“みつばち(N)さん”。
するとNさんは、その収納に出入りする蜂を見た瞬間、こう言いました。
「これは害虫どころか、神様からの贈り物だよ。日本ミツバチだ。」

そう、日本ミツバチ。
一般に出回っている蜂蜜の多くは「セイヨウミツバチ」由来。
しかし日本ミツバチの蜜は、流通量はその数十分の一にも満たず、ほとんどの方は食した事が無いほど。
飼うのも難しく、完全に自然任せ。“気まぐれ女王”とその家臣たち。
でも、その蜜はとにかく濃厚で、芳醇で、繊細で――まさに別格。

たった100ml(オロナミンCよりちょっと少ない位)で1万円で販売されることも。
しかも、うまくいけば一つの巣箱から秋には7リットル採れるという話もある。
それを**複数の巣箱すべてに群れが入り、全室入居となったら……**と、もう夢は膨らみまくりです。

そのときの私はまだそんな知識もなく、収納のフタを少し開けてしまったら――
あふれ出す、琥珀色の蜜。
ひと舐めした瞬間、「え?なにこれ…すご…」と膝から崩れ落ちるほどの衝撃。これまでの市販品はシロップに思える程だ。

Nさんにお願いして巣を専用の巣箱に移設し、ありがたく少し頂いたのち…
気づけば、数日後のある朝――巣箱はもぬけの殻。
越冬に必要な2割の蜜を残さなきゃいけない、なんてことも知らずに調子に乗って取りすぎていた私は、
たぶんハチたちにこう思われたんだと思います。
**「この家、ヤバいやつがいる」**と。
…そして、一晩で逃げられました。

そこからというもの、私はすっかり日本ミツバチストーカーに。
自称養蜂家を名乗り、知識もつけ、もう失敗は繰り返すまいと万全の体制へ。
Amazonで一番安い日本ミツバチ用の巣箱を買い、構造をコピー、知り合いの大工さんに頼んで7個量産。
毎年春を待ち望み、家やNさんの敷地に巣箱を仕掛ける生活。

去年の春はリベンジの年。巣箱は完璧に揃えた。
…が、誰一人として入居せず。完敗。
そして今年はさらに本気。
Nさんの養蜂プロフェッショナルな仲間が「群れが入れば巣箱ごと3万円で譲りますよ」と話すのを聞き、藁にもすがる思いでその巣箱を預けることに。
Nさんと私、それぞれ1万5千円ずつ出し合ってのチャレンジ。

春が過ぎても音沙汰なしで、もう諦めかけていた先週――
Nさんから電話が鳴りました。
「らんど!入ったってよ!」
場所は秦野の巣箱。2年越しの悲願達成。

夜になれば巣に戻るという習性を活かし、軽トラでお迎え。
無事、我が家にミツバチの群れを迎えました。
「ついに、うちにも“新しい家族”と“幸福”がやって来た!」
私は完全に舞い上がり、親族や身近な人たちに自慢しまくっていました。

来月にはうちの敷地内の空き家を改装し、民泊を開業予定。
そのウェルカムデザートとして、デザート作りが大好きな小6の娘に“ハチミツプリン”を考案してもらい、レシピも完成。
秋には自家製ハチミツでそれを提供して、**お土産としての販売も狙えるのでは…?**と、夢は無限に膨らんでいたのです。

🐝さて、最後になりますが…
**表題の「めちゃめちゃ悲しかった話」**を、まだお伝えしていませんでした。

おとといの夜、我が家では大勢を招いてのイベント開催中でした。
お笑い芸人さんを呼んで、みんなでワイワイ盛り上がる中――
ふと横にいたNさんと2人、そっと席を抜け出しました。

まるで修学旅行の先生が
「おい、お前たち、ちゃんと寝てるか〜?」
と夜回りするようなテンションで、私たちは巣箱の様子をそっと覗きに行ったんです。

…すると。

群れが、ほとんど、いない。

明らかに静かすぎる巣箱。
それまでの羽音と熱気が嘘のように、そこにはぽっかりとした空気だけが残っていました。

考えられる理由は、もう山ほどあります。
もしかして、女王からすると私が“生理的にムリなタイプの男”だったのかもしれません。
あるいは、うちの地域一帯で“あの家はヤバい”というレッテルが、いまだミツバチ業界内で共有されているのかもしれません。
……考えれば考えるほど、闇は深まるばかり。

何はともあれ、あの3万円が、一晩で飛んでった。
文字通り。蜂と共にまさかのスピード離脱。

思わずお金のことを真っ先に考えてしまった私。
…そうか、そうか、
ハチだけに、バチが当たったのかもしれません。

というわけで、今回私から「新しい家族と幸福」の自慢話を聞かされた皆さん。
きっと今ごろ心の中で笑いをこらえてこう思っているでしょう。
**「あいつん家の“新しい家族”と“幸福”、居心地が悪くて2日でいなくなったらしいよ」**って。

ああ、恥ずかしい。
そして、深く落胆し家族不信となった私は、翌朝から毎日、嫁と子どもがちゃんと家にいるか確認する朝が続いています。
(※いまのところ、全員確認できてます)

そして今日も、
ミツバチにフラれた男2人――私とNさんは、もはや“ギャンブラー”と化して、リベンジに向けて再チャレンジ中です。
どうか、あたたかく見守っていただければ幸いです。

お金のことを考えちゃうのは、しょうがないじゃん。
だって古物商だもの(みつを風)

追伸:じつはこの日本ミツバチの養蜂、自宅の敷地やアパートのベランダでも、ひそかに楽しめる趣味なんです。
そんなわけで私、勝手ながら――
「湘オク養蜂部」なるものを発足しました。

新しい趣味を持ちたい方、
自然と共に暮らしたい方、
自家製ハチミツにロマンを感じた方。
仲間、募集中です。

興味のある方は、ぜひ私までお気軽にお声がけください。
(※刺されない方法も、ちゃんと教えます)

それではまた明日、市場でお会いしましょう!

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