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粋な男と、野暮な私

先日開催された「湘南オークション25周年感謝祭」。

最後の締めの言葉で、会員の富岡さんから、私どもの普段の振る舞いについて、

「湘南オークションは粋である」

という、大変ありがたい言葉をいただいた。

それ以来、「粋」という言葉が妙に耳に残っている。

普段から何となく使ってはいるものの、では「粋とは何か」と聞かれると、意外とうまく説明できない。

そこで最近、あらためて「粋」について少し調べてみた。

粋とは、気が利いていて、振る舞いがさっぱりしており、それをわざわざ人に見せつけないこと。

例えば、誰かのために何かをしても恩着せがましく言わない。
お金を使っても、「これ、いくらかかったと思う?」などと口にしない。
つらいことがあっても大騒ぎせず、相手に余計な気を遣わせない。

要するに、

「やることはやる。でも、やったことを語りすぎない」

ということなのだろう。

その反対が「野暮」である。

せっかく格好いいことをしても、自分から全部説明してしまう。「俺がここまでやってあげた」と功績をアピールし、場合によっては金額まで発表してしまう。

粋な人はサラッとやる。
野暮な人は、やったことを全部しゃべる。

……こうして意味を噛み砕いてみると、湘南オークションは粋と評価されても、私個人はまったく粋ではない。

むしろ、見事なまでに野暮の方へ当てはまっている。

人に何かをご馳走すれば、つい「これ、結構いい値段したわー、でも気にしないで」と言いたくなる。誰かのために動けば、「俺はこれだけ大変だったー、けど気にしないで」と説明したくなる。

黙っていれば格好いい話も、自分で事細かに説明し、最終的にはコラムに書いて、多くの人に知らせてしまう。

そんな私が先日、

「これが本当の粋というものか」

と思わされた出来事があった。

湘南オークション会員のUさんが、親指に包帯を巻いていた。

※粋な彼の為に名前は伏せます

「どうしたの?」

と聞くと、骨折したのだという。

何があったのか聞いてみると、彼は野球にはそれほど興味がないのだが、友人家族に誘われ、一緒に横浜へ野球観戦へ行ったそうだ。

すると試合中、数万人いる来場者のなかから3人だけ抽選でグローブがもらえる、みたいなのに見事当選し、「この奇跡があれば、ファールボールも飛んできてこのグローブでゲットできるかもねできるかもね!」みたいな事を言っていたのもつかの間、まさかの本当にファールボールが、友人のお子さんに向かって飛んできた。

子どもは避けることもできず、ただ頭を抱えて身を丸くしている。

このままでは直撃する。

そう感じたUさんは、とっさに手を出し、その子をかばった。

ボールを手で受け止めた瞬間、

「ポキッ」

と、本人にもはっきり分かるほどの音がしたという。

完全に折れた。

しかも、手に当たって転がったボールは、二列ほど前にいた知らないおじさんが拾い、そのまま自分のバッグへしまい込んでしまったそうだ。

子どもを守って親指を骨折し、記念のファールボールまで別のおじさんに持っていかれる。

なかなか踏んだり蹴ったりの話である。

ところがUさんは、その場で痛がって大騒ぎすることもなく、「大丈夫だよ」と言って、そのまま試合終了まで我慢した。

親指はみるみる青くなり、腫れ上がっていったという。

試合後に病院で診てもらうと、やはり見事に骨折していた。

あまりにも分かりやすい骨折だったらしく、レントゲン写真を見たドクターが、思わず笑ってしまったほどだったそうだ。

それだけでも十分格好いい話なのだが、私が本当に粋だと思ったのは、その後である。

Uさんは、友人のお父さんにも、その子どもにも、

「あのとき君を守ったせいで、実は骨折していたんだ」

とは言っていないという。

相手に余計な責任を感じさせたくないのだろう。

自分は骨折までしているのに、それを恩に着せることも、武勇伝として聞かせることもなく、黙っている。

なんて粋な男なのだろう。

私だったら、ボールを受け止めた直後から、

「折れた!これ絶対折れた!ポキっていうたー!!」と大騒ぎし伝える事を伝え、その後に「心配ないからね」とKANの様なフレーズで後付けフォローをする。そして親御さんには、

「私の親指一本で、お子さんの頭を守れたのなら安いもんです」

と絵にかいた様な野暮言動となったであろう。

病院からはレントゲン写真を送り、治るまで定期的に腫れ具合を報告し、最後には「子どもを守って骨折した英雄」として、このコラムに一部始終を書いていることだろう。

一方のUさんは、骨折したことすら本人たちに伝えず、何事もなかったようにしている。

まさに、粋なUさんと、野暮な私である。

そんなUさんの親指に包帯を巻いた全身姿でポーズをとってもらい、私は写真に撮らせてもらった。

そして、いたずら心のある私は、その写真をAIに投げ込み、

「これを面白いレントゲン画像に変えて」

とお願いしてみた。

さらに、Uさんが子どもをファールボールから守った一連の流れも、AIに漫画にしてもらい遊んでみた。

この後に画像を貼り付けておきますので、よかったらご覧ください。

※レントゲン写真はAIが作成した物でフェイクです

本人が黙っていた粋な話を聞き出し、コラムに書き、親指の写真まで面白く加工し、漫画にして皆さんに公開する。

富岡さんから「湘南オークションは粋である」と言っていただいたばかりだが、少なくとも私個人については、まだまだ修行が必要なようである。

それでは、また明日、市場でお会いしましょう。

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